東海大学情報技術センターでは、コンピュータ筆跡鑑定の研究を2005年から開始していますが、このたび下記論文が画像電子学会誌に掲載されました。
筆跡鑑定は筆者ごとに筆跡が異なるという筆跡個性に基づいて行われますが、個々の筆者が筆記する複数の筆跡は、筆記するたびに変化し“ゆらぎ”ます。筆跡個性を表す筆跡の違いは筆者間変動、各筆者の筆跡のゆらぎは筆者内変動とよばれます。筆跡鑑定ではこの筆者間変動と筆者内変動をどう捉えて評価するかがキーポイントとなります。
本論文では、まず、筆者内変動と筆者間変動を的確に把握・提示する方法を提案しました。次に、それによって得られる情報に基づき、筆者識別に重要な注目すべき個々の文字中の部位の探索方法を提案しました。さらに、それらの方法を漢字・ひらがな・カタカナ・数字の4文字種・26文字に適用して,筆跡の類似性・相違性という特徴を的確に捉える特徴点とよぶ点を発生させることができました(下図参照)。
本研究では、多くの被験者の方から筆跡サンプルを提供して頂きました。深く感謝いたします。
岩下晋治, 常盤公德, 福江潔也, 長幸平:“筆跡の各部位の筆者内・間変動と筆者識別に重要な部位”, 画像電子学会誌, Vol.52, No.4, pp.539-547(2023)
[図の説明]
(1) 各字画に近い波紋 : ゆらぎ(筆者内変動)の90%が出現する範囲
(2) 各字画から遠い波紋: 筆跡個性(筆者間変動)の90%が出現する範囲
(3) 黄色の●印: 筆者識別に重要な部位に配置された筆跡の類似性・相違性という特徴を的確に捉える特徴点